第9章 暁
部屋の中は、すごく散らかってた。
「あ~ごめん…すぐ片付ける」
几帳面な松潤は、楽屋とかでも荷物を散らかすことはあまりなくて。
それだけで、ここ最近の彼の心がひどく荒んでいたことを物語っている気がした。
「…手伝うよ」
テーブルの上に置きっ放しだった、カップ麺の容器。
俺はそれをゴミ袋に突っ込みながら、込み上げてきそうになる涙を堪える。
こんなの…
普段は絶対食べないのに…
「…相葉くん…」
堪えられたと思ったのに、息を吸い込んだらすんって鼻が鳴っちゃって。
「あ、ご、ごめんっ…なんでもないっ…」
慌てて取り繕ったけど、松潤の眼力の強い瞳が俺を見つめてた。
「ほら、飲も飲も!」
視線を逃れて、急いでテーブルを片付けると、買い込んできた酒の缶を次々にそこに並べる。
松潤はじーっと俺を見つめてたけど、結局は何も言わずに俺の向かい側に座った。
「じゃあ、おつかれっ!」
ビールの缶を開けて、乾杯しようと思ったのに、松潤はまだ俺をジッと見てる。
「どうしたの?」
「…はっきり言えば?」
「えっ…?」
「…知ってるんだろ?俺が、智を監禁してること」
すっと表情を消して、睨むように目を細める。
「翔くんに聞いたんだろ?場所もさ」
誤魔化すことを許さない、強い光が俺を突き刺した。
俺は、ビールをテーブルに置くと、ふーっと深呼吸をする。
そうして、腹に力を入れて、松潤を正面から真っ直ぐに見つめた。
「うん。知ってるよ」
「智を返せって言うんだろ?」
吐き捨てるように言った松潤の顔が、歪にゆがむ。
「…松潤…」
そんな顔、してほしくなくて
いつもみたいに笑って欲しくて
俺は、手を伸ばしてテーブルに投げ出された手をそっと握った。
お願い…
帰ってきて…?
「…辛かったね…」
松潤の瞳が、大きく見開かれた。