第9章 暁
【雅紀】
「俺…帰んなきゃ…」
話をしようって言うと、途端に目を逸らした。
「じゃあ、俺も松潤ちに行く!いいでしょ?」
「はぁ!?なんでっ!?」
「もう決めたのっ!今日は飲み明かそ~っ!」
無理やり肩を抱いて、逃がさないようにぎゅっと力を籠めた。
こうすれば、あの木更津の別荘には行けない
今、翔ちゃんとニノがおーちゃんと話をしてるはずだから…
なんとか、引き留めないと…
「よし!行こ~!」
引き摺るようにして、歩き出す。
「ちょっとっ…」
松潤は咎めるような声を上げたけど。
もっと抵抗するかと思ったのに、すんなりと俺に従った。
マネに、松潤の家の近くのコンビニで下ろしてもらって。
酒をカゴに入れてたら、松潤がパックの惣菜やおつまみを持ってきた。
「今…家に食いもんないから…」
ボソボソと呟いて、カゴを奪うように俺から受け取ると、レジへと持っていく。
「ちょ…俺が払うって!」
「いいよ」
無理やり押しかけるんだからって払うつもりだったのに、さっさと支払いを済ませてしまって。
「これ、持って」
酒の入った重い方のビニール袋を俺に渡すと、スタスタとコンビニを後にした。
「待ってよ~」
慌てて追いかけて横に並ぶと、チラッと俺に視線を投げる。
その瞳にさっきまで広がっていた深い闇は、薄れているように見えた。
「んふふっ…今日は飲み明かそうぜ~っ!」
「…俺、明日も仕事なんだけど…」
「俺だってそうだよ~っ!」
「…タフだよなぁ、相葉くんは…」
並んで歩く夜空には、少ないけれど綺麗な星が瞬いていて。
「あ~、あれ、なんの星かなぁ…?」
それを指差して、松潤の顔を空に向けさせる。
「さぁ…知らね…」
興味なさそうな返事とは裏腹に、その目は瞬く星を見つめて。
俺たちは空を見上げながら、マンションへの道のりを歩いた。
ねぇ…
思い出して…?
こうやって、今まで5人で歩いてきたことを…