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kagero【気象系BL】

第9章 暁


【智】


ベッドの上で、夢と現実の狭間を漂っていた。


一日中、ただこの家にいて。

潤が返ってくるのを待っているだけの日々。

日にちの感覚も、曜日の感覚も。
果てには時間の感覚すらも曖昧になっていって。

ぼんやりとした頭の中で響くのは。



あの日の

翔くんの声



『潤の事が好きなら…
潤を愛してるなら、それでもいいから…
戻ってきて!』



…戻りたい…

みんなのところに、戻りたいよ…

あの温かくて、優しい場所に…


でも、もうわからない


潤を元に戻すまではって

前みたいな屈託のない明るい笑顔を取り戻すまではって、そう思っていたけど

どんなに愛の言葉を囁いても
どんなにキツく抱き締めても

潤の思うがままに、ヒドい抱かれ方をしたって


潤の瞳に光は戻らない


一度失ったものは二度と戻らないとでも言うように

潤の言葉に従えば従うほど

その瞳はどす黒く深い闇の中へと沈んでいく


俺のしていることは、間違っていたんだろうか…?

でも…

だったら、どうすれば…



毛布を頭から被り、膝をぎゅっと抱き締めて小さくなっていると、外で車の停まる音が聞こえた。

潤かと思ったけど、今日の戻りは夜のはずで。

カーテンの外は、まだ明るい。


誰…?

まさか、翔くん…?


転がるようにベッドから降りて、窓の外を覗くと。

ニノの車が見えた。

そして、そこから降りる翔くんとニノの姿。

俺は慌てて玄関へ向かうと、鍵が閉まっているのを確認した。


ダメ…

来ないで…

お願いだから…


心の中で祈っても、届くわけなんかなくて。


“ピンポーン”


静寂を切り裂くように鳴り響いたインターフォンの音に、体が震えた。

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