第9章 暁
俺は、ポツンと離れた、コテージ風の小さなログハウスの駐車場に車を停め、エンジンを切った。
「ここに…」
「うん…行こうか」
遠くから聞こえてくる波の音以外、
何の音もしない……
気味が悪いくらいの静寂。
こんな場所に大野智は一人で…
松潤の帰りだけを待っているのか?
そう思うと、胸が押しつぶされそうになった。
助けて、
あげなきゃ…
ふたりで玄関の前に立ちインターフォンを押した。
………
……
中は静かで、人の気配がないかのようで。
「ホントに、ここに居るの?」
小声でそう聞くと、
「いる。…きっと、松潤じゃない事、分かってるんだ…」
そう言った翔ちゃんの瞳は、
さっき泣いてた彼とは別人で、
頼もしいな…素直にそう思った。
彼のこういうところに、
雅紀も引かれてるんだろうな…
「智くん…聞こえる?ここ開けて?
松潤はまだ帰って来ないから…」
………
「智くん、開けてくれるまで、いつまでもここに居るから…ニノも一緒だよ。」
………
「何時間もここにこうして居たら、帰って来た松潤と鉢合わせしちゃうよ?
それでもいい??
話がしたいんだ…だから、顔見せてよ…
智くん…中に入れて!少しだけでいいか…」
ガチャリ…
鍵が開く音がして、ドアが細く開いた。
「大野さん!!」
そのドアに手を掛け大きく開くと、
上下黒いスエット姿の大野さんが立っていた。
見た目にも痩せた青白い顔に
俺は言葉が出ない。
「入るよ?」
翔ちゃんは大野さんの返事を待たずに
ドアの中に身体を入れた。
「何で来たんだよ…」
「助けに来るって言っただろ!」
「翔くん…脚…」
翔ちゃんが足を引き摺っているのに気づいた大野さんが、急いで翔ちゃんに駆け寄った。
そんな二人を見ながら、
俺もコテージの中に入って中から鍵をかけた。