第9章 暁
【ニノ】
………翔ちゃんのこと、
こんなに泣かしちゃった…
俺が思っていたこと、
絶望の中で思っていたこと、
いつかさらっと、翔ちゃんに話したいな、
そう思っていたけど。
言い出したら止めらんなくて…
運転しているお陰で、
ちゃんと向かい合ってなかったのが幸いしたのか、
それとも災いしたのか。
とにかく結果、翔ちゃんをこんなに泣かす結果になってしまった…
身体を小刻みに震わせて、
堪え切れない嗚咽を漏らす彼…
でもね。
なんか俺、スッキリしたし、
この瞬間、ちゃん吹っ切れた気がしてる。
翔ちゃんには悪いけど……
いや…
翔ちゃんもきっと、俺の本音を聞くことが出来て、
今はこんな泣いてるけど、
きっと区切りを付けられるんじゃないかな?
って…そう思う。
雪解け…とか、そんな感じなのかもね。
俺はとっくに許していたつもりでいたけど、
やっぱりどっかで拘ってて、
櫻井翔を許せないでいたんだ。
でもたった今……
俺の言葉に泣き崩れる彼を見て
不思議と心が凪いでいった。
翔ちゃんも追いつめられていたんだって、
彼の心に初めて寄り添えた気がする。
「翔ちゃん、ほらしっかりして!
それじゃ、二人のこと救えないよ!!
翔ちゃんが頼りなんだからね~」
「…うっ…うん…ん…」
両手で顔を覆ったまま、
翔ちゃんは何度も頷いた。
「この前、『ニノさん』の収録の時さ~…」
高速を降りる頃、
やっと落ち着いた彼に、普通に仕事の話をすると、
翔ちゃんもそれに応えてくれた。
もう……大丈夫そうかな?
「あ、その先の信号を左ね」
「オッケ~」
道はどんどん集落から離れ、物寂しい感じに。
「こんなところに、大野さん…」
「うん…人目には付かなそうだけどね」
「そこ、道なりに右に曲がったらすぐに左に入る道が…あ、そう、そこ…」
翔ちゃんのナビで、俺は松林の中の道へと
ハンドルを切った。