第8章 淫雨
「今回のこと知ったとき、罰が当たったんだ…
って、そう思った…
自分のやりたいように…欲しいものには手を出して、
その結果がこれだ!ってさ…」
「ニノ……」
「俺と雅紀の間に入り込んで、ぐちゃぐちゃにして…
その後は、また大野さんと松潤…
翔ちゃんは、何でも持ってるくせに、どうして、
人のものに手を出すんだ!!って…」
「………」
突然の、ニノが話す本音に、言葉が出ない…
「腹が立って仕方なかったよ!
……でもね?翔ちゃんが気付かせてくれた…
当たり前なんかないんだってこと。
雅紀は俺の所有物でも何でもなくて、
自分の意思で、簡単に裏切るんだって…」
「ニノ、俺…」
ニノが、俺を見てにっこり微笑んだ。
キラキラの海に負けないくらいの美しさで…
「だからこそ、大切にしなきゃって…そう気付けた。
雅紀がいることが当たり前じゃないんだって。
一緒にいられる空間を、もっと必死で守らなきゃいけないんだって…
だから、雅紀に伝えたいって思った…
『愛してる』って…言葉にして…何度でも…
言わなくても分かってるでしょ?なんて、
それじゃダメなんだって……
翔ちゃんのお陰だよ…今は感謝してる…」
………顔を覆って俺は泣いた。
初めて聞いたニノの本音に、俺は自分のしたことの罪深さを、改めて知った。
そして、ニノの懐の広さにも…
「翔ちゃん、俺、翔ちゃんの事、嫌いになんかなれなかった…酷いって思っても…」
俺の胸の奥深くに刺さったニノの言葉が、
その奥でじんわりと優しい熱をくれた。
ありがとう、とか、ごめんねとか、
伝えたい言葉が出てこない俺の背中に、
ニノの手が優しく触れた。
「だから、きっと何とかなるよ!松潤も、大野さんも、翔ちゃんの事、嫌いになるはずなんかないんだからね…」
海の上をすべるように走る、ニノの高級車の中、
俺はいつまでも涙が止まらなかった。