第8章 淫雨
【翔】
午後の日差しを水面にキラキラと映して。
ニノの車は、左に羽田空港を望みながら、
一路、木更津に向かってアクアラインをひた走る。
「俺が迎えに行くよ。翔ちゃん、帰りショックで運転できなくなったら困るでしょ?」
ニノがそう笑ってくれたから、
気持ちが少しだけ軽くなった。
俺たちの……
俺のせいで、ニノと相葉くんに迷惑かけた。
それを、怒りもしないで、
なじることもしないで、
『大丈夫だよ』と力づけてくれる…
俺、二人に大きな貸しが出来ちゃったな。
窓の外を見たまま黙り込む俺の耳に、
ニノの鼻歌が流れた来た。
「…それ…?」
「えっ?…ああ、歌か~(^^)しっぽの歌ね~♪
いい歌だよね…
明日は僕らで描こう…ってさ。
俺たちさ、もう20年以上、一緒にやってきて、
家族以上だよ?遠慮なんかいらないんだって!」
ニノはそう笑って、また歌いだした。
……ニノの唇が紡ぐ…俺たちの歌。
松潤もそう言ってた。
言葉になんか出来なくても、同じ気持ちだって。
歌が気持ちを代弁している、って…
ニノの優しい鼻唄に、
俺は涙が溢れそうになって、慌てて鼻をすすった。
ニノは、それには気付かない振りで、
相変わらず優しいメロディーを口ずさむ…
『絶対に二人を取り戻す』
そう強気に言ってみても、自信なんかなくて、
ふとした瞬間に、心折れそうになる。
……このまま戻せなかったら、どうしようか…って。
だけど、そんな俺の弱さを、
ニノと相葉くんが支えてくれる。
ふたりにも、酷いことした、俺なのに…
ニノだって、本とは俺の事恨んで憎んでいても
仕方ないのに…
それだけのことを、俺はした…
なのに……
「ほんとはさ…」
不意に、前を見たまま、ニノが話し出した。