第8章 淫雨
「え…?」
一瞬、意味が分からなくて言葉に詰まった俺に、ニノは深い溜め息を浴びせかけた。
「そもそも…おまえと翔ちゃんがあんなことにならなきゃ、翔ちゃんは大野さんに手を出さなかったし…潤くんと大野さんも、あんな風にならなかった」
「そんな、こと…」
関係ないって
言えるはずなかった
長い間の俺たちの距離を崩したのは
間違いなく俺と翔ちゃんだから
「…今更、そんなこと言っても仕方ないけど…」
苦しそうに寄せられた眉間の皺に、ニノの苦悩が透けて見える。
今まで、俺には見せることのなかった
ニノの苦しみ
表面上は元の関係に戻ったように見えても
ずっとなにかが心の奥で燻ってるんだ
「だから…潤くんと大野さんだけの問題じゃないんだ。俺たちみんなで、潤くんを元に戻さなきゃ。みんなで、また心から笑い合える関係にならなきゃ…その場しのぎで今をどうにかしても、俺たちはまた同じことを繰り返す」
「…ニノ…ごめん、俺…」
「雅紀」
謝ろうとした俺を、ニノの強い口調が遮った。
「謝罪の言葉なんて、いらない。本当に俺に悪いと思ってんなら、態度で見せろよ」
「態度っ、て…?」
「潤くんを元に戻して、大野さんをまたこの場所に帰すにはどうしたらいいか、ちゃんと考えろ」
「か、考えろって…」
無理だよ…!
俺、ニノや翔ちゃんみたいに、頭良くないしっ!
「そんなの、関係ない。俺たちそれぞれが、ちゃんと考えて責任取らなきゃならないんだ」
ニノの瞳は厳しくて。
俺にそこから逃げることを許さない。
「で、でもさ…」
「…おまえ、明日潤くんと2人で撮影だよな?」
「う、うん…」
「…俺、翔ちゃんと2人で大野さんに会ってくる。その間、おまえは潤くんを足留めして、解決策を探れ」
「ええ~っ!?無理だよ!そんなこと…」
「やるんだよ」
無理だって何度も言ったのに、聞き入れてもらえなくて。
しぶしぶ、頷くしかなかった。