第8章 淫雨
俺は、そのままニノのマンションに行き、
明るくなるまで相葉くんと3人で話した。
こんなことになって、
もう隠しているなんて出来ないから、
俺は包み隠さず事のなり行きを話した。
相葉くんとのことがあってから、
智くんと関係を持つようになったこと。
智くんと松潤はもうずっと前から、
所謂そういう関係だったこと。
松潤から気持ちが離れた智くんが、
俺に助けを求めたのに、
俺はあくまで受け身のように、
『しっかり松潤と別れたら付き合う』
みたいなことを、
智くんに言ったこと。
「そんな……」
相葉くんが俺の話に、
思わず絶句した。
泣きそうな顔になった彼に、
俺は自嘲気味に笑うしかない。
保身のため?
自分は傷付かない安全な場所に居て、
いざとなったら、知らない、
関係ないとでも言うつもりだったのか?
自分の狡さに俯いた俺の背中を、
ニノは優しく撫でてくれた。
「考えようよ、俺たちで…二人を助ける方法…
きっとできるよ!
だって俺たち、もう20年も一緒にいるんだもん。
家族より長いんだよ?
乗り越えられない壁なんかないよ…な!雅紀」
「そうだよ!翔ちゃんひとりで抱え込まないで。
俺たちこう見えて、頼りになるよ!」
相葉くんの、下手っぴなウインクを見た俺は、
涙が零れ落ちた。
開けて翌日は、CMの記者発表会。
「…翔くん、脚…怪我したの?」
後ろから不意に声を掛けられて、
息が止まるほど驚いた。
「…あ、松潤…おはよ…」
俺を見るガラス玉のような瞳には、
何の感情の色もない。
「松潤、おはよう?何か顔色悪いよ?」
ニノの言葉に視線だけを送った松潤は、
それには答えず、コーヒーを入れながら、
「翔くん、脚怪我したの?
ベランダからでも、飛び降りたみたい…」
そう笑う松潤の横顔に、
俺の背中を、冷たいものが流れ落ちた。