第1章 風花
相葉くんの太腿から、じんわりと体温が移って来て、その温かさに泣きそうになる。
俺……こんなにいい人を、利用していいんだろうか?
……相葉くんの大きな手が、俺の頭を優しく撫でてくれる。
なんだろう…?
この気持ち…
今まで感じたことのない不思議な感覚…
俺は本来、恋愛の対象として男は考えられない。
なぜって…
平らな胸や、同じものが付いているソコに、
何の興味もない。
だから、ニノと相葉くんがそういう関係だって知って、正直驚愕したし、全く理解できなかった。
だけど、今…
相葉くんの膝の上で、俺は上がっていく心拍数に、何らかの理由を付けようとしている。
彼女と別れるための手段として、形だけ、一回だけ、
相葉くんを利用することを思いついた。
ニノにはバレない様にすれば、何も支障はない…
相葉くんには申し訳ないけど、俺のカードになってもらおう…そう思ってここに来た…
なのに……
彼の手のひらや、脚から伝わる体温のせいだけじゃない。
身体の奥の方からじわじわと沸き上がってくる熱…
その正体がなんなのか、
俺は気付いてしまった…
ゆっくりと目を開けて、相葉くんの手を掴んだ。
「えっ?翔ちゃん??」
じーっと見つめる俺に、彼の喉がゴクリと鳴った。
それはたぶん、俺の目がいつもと違う色を宿しているから…
「…ねえ、俺のマンションまで送ってよ…一人で帰れそうもないんだ…」
そう言いながら、腕を掴んだ指先に力を込めた。
「……あ、う、うん、そうだね…フラフラしてるからね…俺、タクシー呼んで貰ってくる!」
慌てて部屋を出ていく相葉くんの背中を見送りながら、俺はもう一度、ゆっくり目を閉じた。
今夜、
俺は、新しい扉を開く………