第8章 淫雨
「たぶん…大野さんが、隠したがってた。一度、楽屋で揉めてんの聞いたことあるんだ。潤くんが詰め寄っても、大野さんがのらりくらりと交わしてて…」
「なんで?隠す必要なんて、別に…」
「…翔ちゃんに、気を遣ったんでしょ?」
あ、そっか…
俺とニノ、松潤とリーダーになったら、翔ちゃんあぶれちゃう…
「で、でも別に誰かとペアにならなきゃいけないわけじゃないし…子どもじゃないんだからさ」
「そのこととは別に…大野さんには、翔ちゃんに隠したい理由があった、とか?」
「隠したい、理由って…?」
「…大野さん、本当は翔ちゃんが好きだった」
「まさか!」
そんなわけないよ!
そんな感じ、全然なかったじゃん!
「大野さんは本当は翔ちゃんが好きで、潤くんもそれに気付いてて、揉めた、とか」
「妄想凄すぎじゃない!?」
「そうかな?」
「そうだよっ!」
「でも、大野さんと翔ちゃんって、なんか俺たちとは違う絆があるっていうか…そういうの、感じるだろ?」
「それはさぁ、お兄さん組だから、俺たちをひっぱっていこうって、そういう意識の共有じゃないの?」
「それが…好きに変わったのかもしれないじゃん」
「ばかな…」
だって、翔ちゃんは…
ずっとそんなことなかったんだし…
「…おまえとのことで、そっちにも目覚めたんだろ?翔ちゃん」
突然、地を這うような声になって。
びっくりして隣を見たら、ニノが厳しい顔で睨んでた。
「ニ、ノ…?」
まだ俺のこと
許してないの…?
「とにかく、翔ちゃんが絡んでるっぽいんだよな…」
ふいっと視線を外して、ニノは置いてあった携帯を手に取り、耳に当てた。
「あ、翔ちゃん?今大丈夫?ちょっと聞きたいことあんだけど…え?どこにいるの?」
話してるニノの眉間に、ぐっと皺が寄る。
「木更津…?なんで、そんなとこに…?」
顰められた声に
気持ちがひどくざわめいた