第8章 淫雨
【雅紀】
「なぁ…やっぱ、変だよな?」
シャワーを浴びて出てきたら、ニノはソファに座ってビールの缶を傾けながら、渋い顔をしてた。
「ん?なにが?」
ガシガシと頭を拭きながらその隣に座り、その手からビールを奪って喉に流し込む。
いつもなら、「自分でもってこいよ!」なんて目くじら立てるのに、今日は睨むように宙を見つめながらぼんやりとしてた。
変なのはニノじゃん…
「変って、なにがよ?」
重ねて訊ねると、ようやく俺へと視線を移して。
深い溜め息を吐いた。
「…潤くんのこと」
「え?」
「絶対、おかしいって」
てっきり、リーダーの話かと思ってたら、いきなり松潤の名前が出てきて。
俺の頭は混乱した。
「え?おかしいかな?いつも通りじゃない?」
「うん。恐ろしいほど、いつも通りだね」
「だったら、別に変なことなんて…」
「いつも通り過ぎるんだよ。大野さん、いなくなったのに」
「え?」
松潤がいつも通りなのと、リーダーがいなくなったことと。
なんの関係があるの?
「だって潤くん、めちゃめちゃ大野さんのこと好きじゃん」
「あ~まぁ、そうなのかな?そうかもね?」
まぁ、大好きなんだろうなってのは、薄々わかってたけど…
「…気付いてないの?」
「え?なにが?」
「あの2人…付き合ってるよ?」
「…へ…?」
思ってもなかった台詞に
思考回路がフリーズした
「えええ~っ!?嘘でしょ?」
「こっちこそ、嘘でしょだよ…やっぱ気付いてなかったんだ」
「そんなのっ…だって、メンバー同士だよ?男同士だし!」
「俺らだって、そうじゃん」
「そうだけど!そうなんだけどさっ…」
だって、そんな素振り、全然なかったじゃん!