第8章 淫雨
【翔】
この間も、こうやって闇に紛れて、
ベランダで抱き合う二人を見ていた。
あの時は、智くんが松潤に依存しているんだって、
そう思って絶望した。
智くんを好きなんだって気付いてしまった俺の思いは、無残に打ち砕かれた。
甘い声で松潤にキスを強請る彼が、
俺の中で弾け飛んだ瞬間…
でも今は……
寝室の灯りを背に、
この寒空の下、全裸にされた智くん…
その身体を手すりに押さえつけて、
中心を揉みしだく松潤…
逆光で手元までは良く見えないけど、
嫌がる智くんを、
無理やり自分の好きにしているのは、遠目でもよく分かる。
智くん……
苦々しい思いで、その姿を見つめる。
松潤は、外に誰かいるって…
俺が見てるって、
分かっててやってるのか?
見せつけるために…
智くんは自分のものだと…
「…潤…お願い…部屋に入らせて…」
「どうして?…ここじゃ、困る訳があるの?
感じて気持ちよくなっちゃうの…
見せたくない人でも、いるの?」
「……あぁ、潤…おねがい…」
抑揚のない松潤の低い声に、
俺は背筋を冷たいものが流れ落ちるのを感じた。
……松潤……壊れてる……
「…やめ、てっ…潤…もう…」
「ふふ、もうイキそう?凄いよ?
もうヌルヌルじゃん…イヤだなんて、口だけなんだよな~///智は、いつも…」
「…んっ…ぁぁ…」
「イケよ///我慢しないで、イッちゃえよ!
そしたら、中に入れてやるからさ…」
智くんの高めの矯声に混じって、
粘着質で卑猥な音が、俺の耳にも届いた。
「あっ、潤…やだっ…あ、あ、あっ…やぁ///」
智くんの、悲鳴にも似た声が響き、
暗闇を引き裂く様なその声の後、
彼の身体はぐったりと松潤の腕の中に弛緩した。
俺は、ブルブル震える身体を、両腕で抱き締めた。
智くんを……
彼を助けたい…
だけど、
どうすればいいんだ?
どうすれば………