第8章 淫雨
「やっ…潤っ…やめてっ…」
強引に顎を掴まれて、舌をねじ込まれた。
体に巻き付けていたシーツを剥ぎ取られて。
外気に晒された肌を、ヒヤリとした風が撫でていく。
「やっ…潤っ…こんな、とこでっ…」
抗おうと、体を捻って腕を逃れると、手首を強く掴まれて。
今度はベランダの手摺に抑えつけられ、身動き出来なくなった。
「やだって…!やめてっ…!」
「なんで?いいじゃん、どうせこんなとこ、誰もいないんだし」
「いやっ!潤っ…」
「それとも…」
地を這うような、低い声
「誰か…見てる奴が、いるの…?」
思わず合わせた目の奥に。
全てを焼き払ってしまいそうな
狂気の焔が見える
知ってる…
潤は、知ってるんだ…
ここに、翔くんがいたことを
「ねぇ、智…智は…誰のもの?」
「…潤…」
「ねぇ、ちゃんと答えてよ。大きな声で。みんなに、聞こえるようにさ」
妖しい眼差しに絡め取られて。
俺は蛇に睨まれた蛙のように、動くことが出来ない。
「ほら…ちゃんと、言って…?」
恐怖に
体が震えた
「…潤の…ものだよ…」
そう、答えるしかなかった
これ以上、潤を壊したくないから
「ふふ…良く出来ました。ちゃんと言えた子には、ご褒美あげるね?」
まるで子ども扱いしながら、俺の股間に手を伸ばす。
「あぁっ…やだっ…潤っ…」
「なんで?ご褒美だよ。気持ち良くしてあげるから」
耳の傍で響く声は
まるで悪魔の囁きのように聞こえた