第8章 淫雨
「ねえ、大野さんどうしたんだろうね?」
相葉くんがこっそり俺に耳打ちしてきた。
そう、表向きは体調を崩して
入院したことになっているから…
嵐のリーダーが行方不明なんて、
それこそマスコミの話題を掻っさらうことは必須だった。
だから、大野さんがいなくなったことは
事務所でもごく一部の人間しか知らされていなかった。
「うん…心配だよね…」
「マグロの漁に出たってことないよね~?」
「インド洋に~?ははは、案外そうだったりして」
俺たちは笑ったけど、本当は心配で仕方なかったんだ。
昔の彼ならまだしも、
今の…嵐のリーダー『大野智』が、
仕事を放り出していなくなるなんて
考えられなかった。
……それに…こんな時、一番騒ぎそうな松潤が、
何も言わないのも気になっていた。
……あいつ、絶対、何か知ってる…
根拠はないけど、俺には確信があった。
二人が、どんなふうに
愛を育んできたのかは分からない…
でも、俺と智くんとの間にあったことを
大野さんが話している可能性は大きいし、
それを、松潤が良く思っていないだろうという事は、容易に想像できたから。
4人での収録の後、俺は松潤の後をつけることにした。
この日、弟から借りた車で来ていた俺は、
同じように自分の車で帰る松潤の車の後について、そっと駐車場を出た。
自宅のある方とは、反対方面へとハンドルを切った松潤…
やっぱり///
智くんのところに行くんだ。
心臓が…早鐘の様に打ち出す…
どこに…?
智くんはどこにいるんだ??
一定の距離を保った2台の車は、アクアラインを滑り、
深夜の海上を、一路、千葉へを向かった。
インターを降りて暫く海沿いの道を走り、
松潤の車は、松林の奥に入っていき、
その先にある別荘の前で止まった。
幸い、庭にある外灯が明るくてその様子がよく分かった。
俺は離れたところに車を停めて、
車から降りた松潤が、大きな袋を下げて、別荘の中に入っていくのを見ていた。