第8章 淫雨
【翔】
大野さんが姿を消してから、
半月が過ぎた。
全く連絡が取れないんだ。
熱を出して、松潤が看病してたんだけど。
急にいなくなったって…
松潤も仕事があるから、四六時中見ている訳にもいかず…
3日ほどは一緒に休みを取ってついてた松潤。
まあ、恋人なんだから、それも頷けるんだけど…
「帰ったらもういなくなってて、
全然連絡も取れないんです」
と……
…………
あの日、大野さんが俺を呼んでる気がして、
彼のマンションを訪ねた。
でも、顔を出したのは松潤で、
「病院で診て貰ったら、感染力の強い風邪だって言われたから、ごめんね~?会わせられないよ…」
「そうなんだ…じゃあ、松潤だってヤバいじゃん」
「俺は平気だよ…マスクしてるから…
ほら、もう帰った方がいいよ!大事な身体なんだから…翔くんは(^^)」
そのまま、追い返されるように、
智くんに会う事も無く帰ってきてしまったけど。
その時の松潤の目が、
俺は忘れられなかった…
うまく言えないけど、何だか幕がかかったような…
俺のことを見ているのに、
俺を素通りして、遠くを見ているような…
焦点の定まらないような…
とにかく、いつもキラキラしている彼の目とは、
明らか、違っていたんだ。
気になって、何度もLINEしたけど
既読にはなるのに、返信は無くて…
要領を得ないから電話を掛けてもみても、
いつも留守番電話に繋がってしまった。
智くん……どうしてるんだよ?
それでも、風邪が治れば戻って来るんだろうって、
そう思ってたのに…
『しばらく休みたいんだ、迷惑かけてごめん』
そんなメッセがグループLINEに来て、
それっきり大野智は俺たちの前から姿を消した。
全くの音信不通になってしまったんだ。