第1章 風花
【翔】
相葉くんは、手際よく電話をして個室を押さえてくれた。
「この頃さ~、ニノともこんな風にちゃんと外でデートしないからな~…翔ちゃんと二人で行くのも、久々だよね…」
俺の秘かな企みも知らないで、相葉くんはちょっと嬉しそう。
相葉くんが予約した六本木の居酒屋まで、タクシーで10分くらいだった。
帽子を被ってマスクをした俺たちは、運転手にバレても面倒なので話もしないで携帯を弄っていた。
部屋に通されると、そこは大きなソファーが1つにテーブル、っていう所謂『カップルシート』
「あれっ??俺、なんか間違えちゃったかな~」
…ふふふ、相葉くんらしいよ。
「なんか変な感じだけど…ま、いっか!」
「お店の人、そう言う関係だって思ったよね~?もう、絶対俺たち二人だって、バレる訳に行かなくなったじゃん!」
頭を掻く相葉くんは、テレて赤くなっていて、ちょっと可愛い。
それに……
俺にとっては、寧ろありがたい位なのかも。
「どうする?部屋、交換してもらう~?」
「俺は別にこのままでもいいよ。相葉くんがどうしても嫌だっていうなら、変えてもいいけど…」
「俺は…俺だって、別にいいよ…」
相葉くんが、途中で店員さんが来ない様にと、ボトルでワインと焼酎と、料理もたくさん頼んだ。
それら全てがテーブルに並ぶと、
「誰がこんな食うんだよ?」
「ホントだ~!俺、こんなに頼んだ~??」
「うん、頼んでたよ」
「マジで??まあいっか!ゆっくり飲んで食べようよ!ね♪翔ちゃん!」
相葉くんはそう言うと、顔をクシャクシャにして笑った。
その屈託のない笑顔に、俺は胸がキュンとした。