第1章 風花
撮影は順調に進み、予定時間より早く終わった。
あんなこと言ったけどさ、絶対待ってるもんね~、ニノちゃんは!
そうだ!
連絡せずに押しかけちゃおっかな~。
んで、ゲームに集中してるとこ、襲っちゃおうかな~♪
なんて、この後のことを妄想しながら帰り支度を整えていると。
「相葉くん、この後、時間ある?」
翔ちゃんに、そう声を掛けられた。
「え?あ~、あるっちゃあるけど…」
「ああ、そっか。ニノんとこ、行くんだっけ?ごめんごめん」
そう言った翔ちゃんの顔が、なんだか寂しそうに見えて。
「…ちょっとだけなら、大丈夫だよ?」
つい、そう返していた。
まぁ予定より早く終わったし。
ちょっとくらいなら、大丈夫だよね。
それに、最近翔ちゃんと飲むことなかったし。
「そう?ごめん。ちょっと…相談したいことがあってさ」
翔ちゃんは、あまり見ることのない、困ったような表情を浮かべてる。
「え?相談?」
それって、俺でいいの?
ニノか松潤の方がいいんじゃないの?
「いや…今日のは相葉くんに聞いてもらいたくてさ」
「ええ!?いや、まぁ聞くのは全然構わないけど…アドバイスとか、期待しないでよ~?」
そう言うと、ハハッて渇いた笑い声を漏らす。
「大丈夫だよ。聞いてもらえれば、すっきりするだろうからさ」
どこか儚げな笑みに、俺は反射的に頷いていた。
「それなら、お安い御用だよ!よし!じゃあ、渡部さんに聞いた安くて美味しい居酒屋、紹介してあげる!」
俺たちは、連れ立って控室を後にした。