第7章 湖月
【翔】
「……あ、そう言えば、大野さん、
熱出したみたいですね~
あの人でも熱出すんですね…」
えっ??今何て…?
「誰が、どうしたって?」
マネの車の中、片方にイヤホンをして
ニュース動画を見ていた俺は、
マネの言葉をほとんど聞いていなかった。
でも、
今、大野さんがどうとか、って…
そう言ったよね?
「だから~、大野さんが熱を出したって言っ…」
「で?どうしてるの?大野さん!?」
「あ~、なんか、松本さんが看病してるみたいですよ~、ちょうど休みだからって…」
……なんだって…?
松潤が、大野さんを…?
………よりを…戻した、とか?
いや……そんな、はずは…
………どうして……?
「どうします?マンションに帰る前になんか買って…」
「自分の家にいるの??」
「は??」
「だから!大野さん…熱って…入院してるの?」
「ああ、大野さんの家にいるみたいですよ?
たまたま、松本さんが家に行ったらしくて。
でも心配しなくても、
松本さんがちゃんと看病するからって、
言ってたみたいですし~」
……たまたま、熱出した?
そんなこと…ある訳……
智くん……
看病が必要なほどの熱なの?
…………まさか…?
松潤が、看病するって……
「じゃあさ!なんか、お見舞い持って行ってみよっか!」
信号待ちで止まっていたマネは、
ミラー越しに俺を見て、
「ああ、それならダメですよ~
誰も来ないようにって、松本さんに強く言われてますから~」
「来ないように…?どうして??」
「さあ~?感染るからじゃないですかね~?」
ああ…感染る……
………そうか…まあ、そうだよな…
それぞれが、穴を空けられない仕事抱えてるからな…下手に貰っても困るしな…
「で?何か買ってきますか??」
「えっ?ああ、今日は、いいや…」
「じゃ、真っ直ぐ帰りますね~」
考え過ぎなのかもしれない…
ホントに熱で、看病を……
でも……
………どうしてこんなに、
胸騒ぎがするんだ?………