第7章 湖月
見たく、なかった
「はっ…ぁ…あ、ぁっ…」
そんな顔、させたくなかった
「ん、ぁっ…じゅ、んっ…」
だけど、そんな目をさせたのは、間違いなく俺で
心が
引き裂かれる
「嘘つき…身体はこんなに、正直なのに…」
潤の熱い唇が肌に触れるたび、そこから波紋のように熱が広がっていく。
一つ、二つ…
波紋が広がっていって
やがて
大きなうねりに変わる
「ん…ぁ、ぁ…じゅん…」
わからない…
翔くんを好きだって思う気持ちに
間違いはない
けれど
もう喪ったと思っていた潤への気持ちも
心の奥底でまだ微かに残っていて
潤の熱を感じるたびに
息を吹き返したとばかりに蘇ってくる
「なぁ、思い出してよ?こうやって、何度も身体を重ねたでしょ?愛してるって囁きながら、何度も何度も溶け合ったでしょ?」
甘く囁く声が、脳髄を痺れさせる
「まだ、忘れてなんかない。智が俺を愛してるって気持ち、なくしてなんかない。だってほら…こんなに熱い…」
「んぁぁっ…潤っ…」
熱い手が、俺の滾りを直に握って
俺は、震えた
「謝れって言うなら、智の気が済むまで謝る。土下座しろっていうなら、いくらだってやる。智の言うこと、なんでも聞く。だからお願い、思い出してよ。俺のこと愛してるって言ってた気持ち、思い出して?」
「…潤…俺は…」
「智は、まだ俺を愛してる」
強く言い切った潤の瞳には、今にも零れんばかりの涙が溜まっていて。
息が、詰まった
「智…愛してるんだ…」
切なる想いを閉じ込めた雫が落ちてきて
俺の中に
溶けて消えた