第7章 湖月
ダ――ッン///
大きな音を立てて、智の身体が壁にぶつかった。
「ってぇ~///」
顔を歪ませる智に、俺は我に返って智に駆け寄った。
「ごめん!!どこ打ったの?怪我してない??」
「もう、終わりにしたい…」
顔を覗き込んだその瞬間、智は俺を見ずに苦しそうにそう言った。
「……何て?…」
「潤…俺たちもう、無理だよ…戻れない…
もう、別れたいんだ…」
……嘘だ…そんなの信じない…
だってずっと一緒にいようね、って…そう約束したじゃない!?あれは嘘だったの??
「潤…ごめんね…俺はもう、潤と一緒に生きれないよ…」
「なんで…?俺の事、嫌いになったの?」
「嫌いになった訳じゃない…だけど…」
智は俺を見つめている。
いつも俺に向けられていた、あの優しい目じゃなくて…悲しそうに、俺を憐れむ同情の眼差し…
「健くんとのことは謝るから!100回だって1000回だって…智が許してくれるまで、俺…」
「そんなんじゃないんだ…」
「だったら!!」
智は、俺を見ることもしないで立ち上がると、
棚のところまで歩いていき、あの思い出の写真を見つめて、それを静かに伏せた。
「……俺はもう、潤を愛せない…気持ちが、離れてしまったんだ…戻ることは……できない」
「翔くん??」
智の肩がピクンと跳ねた。
「翔くんのことろに行くの?」
「……俺は…」
否定しないことが、答えだった。
「俺を捨てて…翔くんと付き合うの??」
「…ごめん……」
「ふざけんなよっ//////」
俺は智の手首を掴んで、引きずるように寝室に向かった。
「止めてっ///潤…痛いっ///」
怒りが…
今まで感じたことのない激しい怒りの炎が、
俺の全身を焼き尽くす…
智の身体を、ベッドの上に投げ出した。
そのまま、クローゼットの中に入っていき、白い手錠を出して来た。
こんなことに使う日が来るなんて…
「潤…何を……?」
怯える顔が許せなくて、俺は彼の両手をベッドボードに繋いだ。