第7章 湖月
【潤】
智のマンションに着いたけど、
智は本当にいなかった。
どこに行ったの……?
俺が電話した時、本当はここに居たんだろ?
だったら、
俺が来るって分かって、どこに逃げた?
俺から…逃げるつもりかよ??
……智…もう…
お前をこの手に取り戻すことは出来ないの?
たった一度の過ち…
それですべて終わったって言うの??
………
そんなの、ヤダ!!
何度でも謝るから…
何でもするから…
智が許してくれるまで、俺……
何度だって…いつまでだって土下座し続けるよ…
だから……
お願いだよ…
ふと見ると、リビングの棚の上、
俺と智が二人で行った北海道の写真が飾ってあった。
よく撮れてるね♪
智が気に入ってそこに飾った写真だ。
『誰かに見られるよ?』
と言う俺に、
『潤しかこの部屋に入れないもん!』
って……
そう唇を尖らせていたよね…
智…
智……俺たち、また…
ガチャリッ…
その時、玄関で鍵の開く音がして、
俺は慌ててリビングを飛び出した。
「智!帰って来てくれたの?」
「ん…つ~か、ここ俺ん家だし…」
「そっか…そうだよな…」
俺は精一杯の笑顔を作った。
顔が強張って、上手く笑えない…
「ケーキ買って来たんだ!智の好きな自由が丘のケーキ屋さんのやつだよ?
紅茶でも入れよっか?
えっと~…アールグレイがあったよな~…」
「潤…聞いて…」
「あれ~?もう終わっちゃったんだっけ~?
また買っとかないといけないかな~?」
「潤…」
「じゃあ、珈琲でもいいよね?」
「潤!!」
「………」
嫌だよ…そんな顔しないでくれよ…
「潤、俺…」
「ヤダ!!聞きたくない///」
「潤…」
耳を塞いでしゃがみ込む俺の肩に、智が近付いて手を掛けた。
「聞きたくないって///」
手を払いのけると、智の身体は、バランスを崩して大きく後ろにひっくり返った。