第7章 湖月
【翔】
突然、俺の携帯を奪って、
そして唇をぶつけて来た智くん…
……何が起こった?
………どうして急に??
不意に降ってきた甘い痺れが、
ゆっくりと俺の心と身体を侵食していく…
「…しょ…くん…」
「…んんっ…ね…さと…つっ…」
身体を離そうとしても、首の後ろに腕を回されて自由が利かない。
無理やり抉じ開けて、舌先を差し込んできた。
……答え、出てないんじゃなかったの?
なのに…何で急に、こんなこと…
………
……??
もしかして……
いや……もしかしなくても……
智くんの恋人って……
智くんの、あの艶めいた身体を自由にしていた、
その人って…
ソファーの上に放り出された携帯から、
俺の名を何度も呼ぶ微かな声……
俺の中に浮かんだその人の残像は、
一気にハッキリと形を成した。
『松本潤』
そうなんだよね?
あなたのことを愛して、
そして、
傷付けた男(ひと)………
息をするタイミングさえ分からなくなる。
激しく……俺の舌に絡み付き
貪るように吸い上げる。
「…んっ…あっ…ねぇ…んんっ……」
この人の、
滅多に見せることのない、
荒れ狂う嵐にも似た激情………
流されてしまう………
このまま、身を委ねてしまう………
智くん……
このまま、あなたを奪い去ってしまっても、
いいんだね?
苦しんでいるってことは、
心がまだそこにあるって、
そういうことじゃないの??
まだ、松潤のことを愛しているから、
こんなに苦しいんじゃないの?
だったら………
もしそうなら、
俺はこのままあなたの手を取ることはできないんだ……
雅紀にしたのと、同じ過ちを、
また繰り返すことはできない…
だって、
メンバーだから。
「さとっ///…智くんってば!」
力ずくで、彼の身体を引き離して突き飛ばした。