第7章 湖月
あんなにドキドキしてたのに、軽口を叩き合ってたら、そんな緊張は吹っ飛んじゃって。
自然に笑顔になれる。
気負わなくても
いろいろ考えなくても
翔くんといると、素直な感情が心の奥から溢れ出てくる
「やっと、ちゃんと笑った…」
「え?」
「ずっと…無理して笑ってたろ?正直、それを見てるの辛かった。だから…智くんがちゃんと笑ってくれて、嬉しいよ」
まるで自分のことみたいに、本当に嬉しそうに笑ってくれて…
胸の奥が、ぎゅうっと軋んだ。
「…ありがと、翔くん…」
「気にしないで。さてと…そろそろ、寝る?」
「へ!?」
翔くんの誘いに間抜けな返事を返した俺を見て、翔くんは盛大に吹き出す。
「へっ、て…なに?なんか、期待しちゃった?」
「き、期待なんて、別にっ…」
別に…
そんなの、してないもん…
「ふふ…嘘ばっかり。鼻、ピクピクしてるよ?」
「ふぇっ!?」
慌てて鼻を両手で隠すと、また翔くんは大きな声で笑った。
「なんだよ~!んな、笑うなよ~!」
「だってさ、あなた、正直すぎ…」
笑い転げながらも、俺に向かって手を差し出して。
「でも…今日は、ただ一緒に寝よう?ね?」
「う、うん…」
翔くん、ちゃんと約束守ろうとしてくれてるんだ…
この気持ちの、答えがわかるまで…
「ありがと…」
その手を、取ろうとした瞬間。
空間を切り裂くように、翔くんの携帯が鳴り出した。
「あ、ごめん」
一旦俺から視線を外し、テーブルの上に置きっ放しだったそれを手に取る。
「え、松潤?こんな時間に?」
画面を見た翔くんの言葉に、心臓が止まるかと思った。
そっから先は
考えることなんて出来なくて
気が付いたら
翔くんの手から携帯を奪い取って
それをソファに向けて放り投げて
彼の唇に
噛み付くように自分の唇を重ねてた