第7章 湖月
【智】
翔くんがシャワーを浴びてる間、なんだか落ち着かなくて、部屋をウロウロしてた。
俺、なにしたいんだろう…
潤から逃げて、翔くんのところへ来て。
まるで、出口の見えない迷路に迷い込んだ感じ。
俺…ヒドいこと、してるよな…
潤のこと、あんなに詰って…
潤は、もう二度としないって、俺だけだって言ってくれてるのに
俺は
寂しさに耐えられなくて
翔くんと…
これじゃあ、潤のこと責められない
むしろ、責められるのは俺の方かもしれない
潤は健くんとは一度の過ちだったけど
俺は
俺、は……
「ゴリラみたい」
揶揄うような声が聞こえて、びっくりしてリビングの入口を見たら、下のスウェットだけを履いた翔くんが、お風呂上がりの上気した肌を惜しげもなく晒しながら入ってきた。
その身体から、ゆらり、と色気が揺らめいて見えて。
慌てて、目を逸らした。
翔くんの裸なんて、見慣れてるはずなのに…
なんでこんなドキドキすんだよ…
まるで
翔くんに恋してるみたい
「なに?どうした?」
不自然に顔を背けた俺に、翔くんが不思議そうに首を傾げる。
「ううん、なんでもないっ…」
俺はブンブンと大きく頭を振った。
「ってか、ヒドイ!なんでゴリラなの!?」
動揺してるのを悟られたくなくて、わざと大きな声で抗議してみる。
「だってさ、同じとこウロウロしてんだもん。ちょうど、色も黒いし?」
「それは、関係ないだろ~!?」
「ホント、最近黒過ぎだよな~。ちゃんと日焼け止め塗ってるの?」
「塗ってるし!」
「効果なくねぇ?それ」
「…確かに…」
「ぶふっ…認めるのかよ」