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kagero【気象系BL】

第7章 湖月


【翔】

項垂れる智くんにかける言葉を探す。

……ホントはさ。
簡単なことじゃん…

そう言ってやりたかった…


理由なんかなくてもここに来たこと。

それが答えなんじゃないの?
って…

迷って、出口を見つけて彷徨って、
もがき苦しむ中で、

智くんはここに…俺のところに来た。

それが全てなんじゃないの??

そう教えてやりたかった。


でも…
俺が言ってしまっては、何にもならないんだ。
智くんが、自分で見つけなきゃ…

辿り着かなきゃ…
意味がないんだ。


ひとりでマンションに帰って来た時。

まさか智くんが待っててくれるなんて思ってもみなかった。


約束もしないで、気が付いたらここに来ていた。

そんな彼が…嬉しかった。

嬉しくて、愛おしかった。


外じゃなかったら、そのまま抱き締めていたかもしれないくらい…彼の姿を見た時、心が躍ったんだ。


でも…

俺は相葉くんとニノを傷付けた。

自分のエゴで、二人の間にとんでもない溝を作ってしまうところだった。

俺たちはただの友達じゃない。

嵐として、これからも一緒に時代を席捲していかなきゃいけない『仲間』なんだ。

また、相葉くんにしたような、
あんなこと、する訳にはいかない…


だから……


智くんは、迷ってる……

恋人との関係が上手くいってないんだ。

だから俺に助けを求めた…

それは、俺に、仲間として手を差し伸べて欲しいのか、
それとも、別の意味でなのか…

今は分からないよ…

ひとりで飲もうって酒やつまみを買って来たけど、
味気ないものだとは思っていた。

そんな心にぽっかり空いた穴…

誰かが、隣にいてくれたらいいのに…って。

本心ではそう思っていた。


『淋しい』と言葉にしてしまうことが怖くて、
平気だって、自分に言い聞かせていたんだ。


「智くん…もう一杯飲むでしょ?」

俺は、溢れ出してしまいそうな想いを閉じ込めようと、
彼に背を向けて、キッチンに逃げた。


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