• テキストサイズ

kagero【気象系BL】

第7章 湖月


「どうぞ」

翔くんはなにも聞かずに家に上げてくれた。

「適当に座ってて…俺着替えてきちゃうから」

突っ立ってる俺にそう言って、ベッドルームへ消える。

俺はソファに腰を下ろし、自分の手を見つめた。


翔くんが…繋いでくれた手。

とても温かかった。

離すのが惜しいと思うほどに。


「飯、食った?俺、腹減ってるから食ってもいい?」

ぼんやりと自分の手を見てると、翔くんがローテーブルの上に買ってきたお惣菜を並べ始めた。

俺の分のお皿と箸も、用意してくれる。

「い、いいよ!俺は!翔くんのご飯でしょ!」
「食べてきたの?」
「…食べて、ないけど…」
「だったら食べよ。一人で食べるより二人で食べる方が美味いじゃん!」
「う、ん…」
「ほら、ビールも」

ビールの缶を押し付けられて。

俺はしぶしぶプルタブを開けた。

軽く缶を当てて、一気に喉に流し込むと、キンと冷えたビールが喉を滑り落ちていく。

「うまっ!」
「うめぇっ!」

同時に叫んで。

思わず顔を見合わせて笑ってしまった。

「ほら、食べて食べて」

一人分の夕飯を、二人で分けて食べる。

「ごめんね…」
「大丈夫大丈夫!足りなかったら…あ、ニノに電話して、いつも頼んでる出前紹介してもらおっか」
「…そうじゃ、なくて…」
「…え…?」
「本当は…まだ二人で会っちゃいけない、のに…」


翔くんの、アーモンド形の大きな瞳が、揺れた。


「まだ…わかんないんだ…翔くんへの気持ちが、なんなのか…」
「…智くん…」
「わかんないから…わかるまでは二人っきりにならないようにしようって、そう思ってたのに…それなのに…」


俺の足は

勝手に翔くんの元へ来てしまっていたんだ


/ 351ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp