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kagero【気象系BL】

第7章 湖月


【智】



『いやだ!絶対別れない!』
「潤…」
『この間のことは、謝るよ!智が許してくれるまで、何度だって!』
「そういう…ことじゃなくて…」


もう…

そういう問題じゃ、ないんだよ…


『なんで!?なんでだよ!お願いだから、もう一回話を聞いてくれよ!』
「…潤…ごめん…」
『ごめんじゃわかんねぇよっ…!』
「ごめんね…」
『…今から、そっち行く』
「ダメだよ…」
『なんでっ…』
「…出掛ける、から…」

そんな予定なんかないのに。

俺は嘘を吐いた。

『…嘘だ…』

俺の行動パターンを知り尽くしてる潤は、すぐにそれを見抜いて。

『…これから、行くから』

思い詰めた様子で、電話を切った。





慌てて家を飛び出した。


潤の顔を見ると、どうしていいかわからなくなりそうで…

俺は…どうしたいんだろう…?


未来を見つめようとしても、そこは真っ暗な闇に覆われていて。

光なんて見えない。

この間までは、潤と並んで立つ未来が、見えていたというのに。


タクシーを捕まえて、乗り込んだ。

「どちらまで?」

そう聞かれて、頭が真っ白になった。





「着きましたよ」

運転手にそう言われて窓の外を見れば、そこは翔くんのマンション。


俺…翔くんちに来てしまったの…?


「お客さん?ここでいいんでしょう?」


お金を払い、外へ出た。

震える指で翔くんの部屋を押しても応答はない。


あ…まだ仕事か…

今日はなんだっけ?
何時に終わるんだっけ?

その後、飲みに行ったらどうしよう…


俺は、どうしてここに…?


立ち尽くしてると、住人らしき人にジロジロ見られて、慌てて植え込みの影へ隠れた。


帽子を目深に被って顔を見えなくすれば、酔っ払いが休んでるだけにみえるかな…


俺は翔くんの優しい笑顔を浮かべながら、彼を待った。

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