第6章 霧海
撮影は滞りなく進む。
今日は俺と相葉くんでクレープを焼いて食べる、
という企画で…
「じゃ、俺はチョコバナナ~♪」
「俺は、チーズケーキ、入れてみようかな~」
「それって、ケーキをケーキの皮で包むみたいじゃん?」
「ホントだ~…」
取材だけど、なんだか楽しくて。
俺たちはほぼ素でクレープ作りを楽しんだ。
「じゃあ、ちょっと食べてるところ、お願いしま~す」
「櫻井さんに、相葉さんが、“あ~ん”してもらえます~?」
一瞬顔を見合わせたけど、直ぐに、
相葉くんがクレープを大きめに切ってフォークで刺した。
「あ~ん♪」
「あ~ん…んぐぅ///でけぇ~って!」
「あ、ごめ~ん」
「あ~、イイですね~。仲良し感が溢れてます!!」
カメラマンさんにそう言われ、俺と相葉くんは、目を合わせて少し笑った。
………これで…
これでいいのかな??俺たち…
これが、正解…なのかな?
カメラを替えている、ほんの僅かな待ち時間、
相葉くんが、俺のことは見ずに、
クレープを焼き続けながら言った。
「俺さ、ニノと、ちゃんと向き合うことにしたんだ…」
相葉くん……
「逃げないで、ちゃんと伝えていくよ…何度だって…許してもらうまで…」
「…そっか…」
周りの人は忙しなく動いていて、俺たちだけが、不思議な空間に二人っきりみたいで。
「翔ちゃん…ありがとね…」
「ふっ…お礼なんか、必要なくね?」
「いや…俺を変えてくれたのは翔ちゃんだよ…
気付かせてくれたのも…」
…綺麗だな…迷いを吹っ切った人の顔って、
こんなにも清々しくて、自信に満ちていて…
「翔ちゃん…」
「えっ?」
「翔ちゃんも、ちゃんと幸せになってね」
フフフ…雅紀らしいよ…
「だな~♪お前たちよりな!」
「うん。そうだよ、絶対///」
「お待たせしました~、じゃ、もう一回お願いしま~す!!」
「「は~い!!」」
しっかりハモった俺たちは、
またカメラに、最高の笑顔を向けた。