第6章 霧海
【翔】
今日は相葉くんと二人でテレビ誌の取材だ。
「おはようございまぁ〜す」
「お、櫻井さん、おはようございます」
「今日、宜しくお願いします」
控え室に入っていくと、
相葉くんは先に来ていて、メイクしていた。
「あ、おはよ、相葉くん」
「おはよう、翔ちゃん…」
……相葉くん……
……戸惑うくらいに、いつもの彼で…
明るくて…そう、太陽みたいな笑顔……
なんか、吹っ切れた…のかな?
そんな彼の横顔に、俺は鏡越しにそっと視線を送った。
それに、気付いているのか、いないのか、
相葉くんは鏡を見ながら、
ヘアメイクのお兄さんと楽し気に話している。
「櫻井さん、日に焼けました~?」
俺のメイクを始めてくれていた女の子がそう言った。
「あ~、やっぱり~?沖縄行って来たからね~」
「いいですね~、沖縄、私も行ってみたいです!」
「でも、仕事だよ~?一泊だし…」
「そうなんですね~、折角の沖縄なのに」
「ZEROの取材??」
「あ。うん」
俺たちの会話に、相葉くんが入って来た。
驚いた俺は、彼の顔をまじまじと見つめた。
相葉くんは、屈託のない笑顔と、
曇りのない瞳で俺を見ている。
……ああ、これは、入り込めないんだな…
それだけで、俺はそう思ってしまった。
…ニノに、敵わなかったってことだ。
相葉くんは何も言わない。
だけど、最近の彼の目とは、明らかに違っていた。
俺を求める時の…
どこか遣る瀬無い、切羽詰まった顔じゃない…
……そうか…そういうことなのかな?
「相葉くん、あのさ…今日」
きちんと話すために、仕事終わりに飯でも、
そう誘おうと思ったその時、
「櫻井さん、相葉さん、撮影の準備出来ました~」
記者の人が俺たちを呼びに来た。
「「はーい!!」」
揃って立ち上がり、スタジオに向かう俺たち。
その瞬間…
俺たちは『嵐』になる。
後ろにドロドロした関係を背負っていたとしても。
俺たちは肩を組んで笑う…
それが俺たちの仕事だから…