第6章 霧海
「あ~~!!ここ、コブになっちゃったぁ~!
どうしよう~///痛い?痛いよね??
冷やさなきゃ!!」
今まさに、押し倒そうとしていた俺を放り出して、
慌ててキッチンに走り込む雅紀…
思わず笑みが零れた。
なんか、俺たちらしいや…
全くさ。
鼻息荒く襲い掛かるから、周りが見えなくなっちゃうんだよね~、いつも…
あいつ、
ちゃんと聞いてたかな~?
俺の一世一代の『愛の告白』
あんな、こっ恥ずかしい言葉、二度と言わないよ?
そこに、氷嚢を持った雅紀が帰って来た。
「どこだっけ??…あ、ここだ!
ヤバい、さっきより腫れてるよ~///
ちょっと冷たいけど、我慢してね?」
雅紀は、再び俺の身体を抱き寄せ、
頭の上に氷嚢を乗せた。
じんわりと、冷たさが伝わって来て気持ちいい。
「どう~?痛むよね?」
「冷たくって、気持ちいいよ…」
「でも、パックリ割れなくて良かったよ~
そしたら、救急車もんだったよね?」
「救急車なんて、大袈裟だよ~」
俺が少し笑うと、雅紀は、
「いや!!ニノちゃんに傷付けちゃったら、取り返しがつかないとこだったもん!」
「取り返しがつかなかったら…どうする気だったの?」
「えっ!?…あ、いや…それは…」
「傷物にしたから、責任とってお嫁に貰ってくれた?」
「お嫁って…」
胸に抱かれているから、
雅紀が今、どんな顔してるのか分かんないけど…
困る雅紀が何だか可愛くて、クスッと笑った。
すると雅紀は、
「傷物にしなくたって、お嫁に貰うよ。
だって俺には、ニノだけだもん」
そう言いきった。
…………
雅紀…バカ…アホ…おたんこなす…
お前の母ちゃんでべ…
「泣き虫…」
頭上から降ってきた声が、
あんまり優しいから、堪えていたのに、
溢れた涙が頬を伝った。