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kagero【気象系BL】

第6章 霧海


【和也】

………目を閉じると、エレベーターが静かに上昇を始めた。

身体にかかる重力を感じながら、
ゆっくりと目を開けた。

斜め後ろに感じる、雅紀の気配。

分かってるよ。
大きな溜め息でも吐きたいんだろう。


…………なあ、雅紀……
俺って最低だよな?

嫌なヤツだよな……


こんなじゃ、やっぱり面倒くさいから、
お前と付き合うのやめる。

翔ちゃんとこ行くよ。

そう言われちゃっても、仕方ないよな。


……俺は雅紀の、太陽みたいな明るさが好きだった。
そこに居るだけで、
周囲にいるみんなを笑顔にする……

俺とは真逆の、
純真で爛漫な……

みんなが雅紀を好きになるんだ。

それに引き換えて、俺は……

苦々しい思いに、唇を噛んだその時、
エレベーターが最上階に着いた。

無言で降りる俺に、スーパーのビニール袋をシャカシャカいわせて、
雅紀が続いて降りた。


……なあ、雅紀……
俺どうしたらいいんだろうな?


雅紀を失うことを考えたら、
そんなことは絶対に嫌だと思った。

彼のいない日々なんか、
生きている価値がないくらい、
それほど、雅紀は俺の一部で……

『離れるなんて、無理』

だからそう言ったのに。

素直になれない自分に腹が立つ。

許すもなにも、
例え彼が、翔ちゃんと俺の、
両方とも別れる気はない…

そう言われても、

俺は雅紀と、別れるなんて出来ない。
翔ちゃんと、順番にしか会えないけど、それでもいいのか?

って、そう言われたとしても。

俺は雅紀の側にいることを選んだだろう。


だったらさ………
この態度はなんだよ?

こんな最低なヤツ…
いくら雅紀でも、うんざりだよな。


キッチンで買ってきたものを出している雅紀を横目に、俺はゲームの電源を入れた。

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