第6章 霧海
「…なぁ…ホントにうち、来るの?」
助手席に乗り込もうとした俺に、ニノが冷めた声で訊ねた。
「え?」
まさかそんなこと言われると思ってなくて、体がビクッと震えてしまった。
「な、なんで…?」
「…翔ちゃんのとこ、行かなくていいの?」
「い、行かないよ!もう、翔ちゃんと2人で会うのは止めたから!そう、言ったじゃん!」
「…ふ~ん…」
素っ気なく返事をすると、運転席へと乗り込む。
俺は置いて行かれないように、慌てて助手席のドアを開けた。
ニノはチラッと俺を見て。
でも、なにも言わずにエンジンをかけた。
一瞬だけ絡んだ視線は
酷く冴えていた
途中、食材を買うのに、スーパーに寄って。
ニノのマンションに着くまで、俺たちはなにを話すこともなかった。
車内には、重苦しい雰囲気が漂っていて。
なにかを話しかけようとしても、ニノの横顔が俺を拒否しているように思えて。
今まで、そんなこと一度もなかったのに…
やっぱり、許せないのかな…?
そりゃあ、そうだよね…
俺だったら…
もし、ニノが他のメンバーとそういう関係になったら…
「降りないの?」
低い声で言われて、ハッと我に返った。
既にシートベルトを外したニノは、冷たい顔で俺をジッと見つめていた。
「あ、お、降りるっ…」
慌てて車を降りると、スタスタと早足でエレベーターへ向かう後ろ姿を追う。
先にエレベーターに乗り込んだニノは、すぐにドアを閉めて。
俺はドアに体をぶつけながら、なんとか一緒に乗り込んだ。
ニノは、壁に背を預け。
目を閉じている。
まるで
俺を拒むように
もう
ダメなのかな…?
俺たち、これからどうなるんだろう…