• テキストサイズ

kagero【気象系BL】

第5章 霖雨


【翔】

『…忘れさせて……』

智くんはそう言った。

忘れたいほどの辛い思いを、今この人はしているんだ。

……智くんと、そんな恋をしているヤツって…


俺はもう確信していた。
智くんの恋人は、男だ。

ずっと男だったかな?

そう言う突っ込んだところは、
若い頃なら多少はしていたけど、このところ、話したこともなかったな…

智くんがどんな人と、どんな恋をしているのかなんて…
興味も、ない……

いや、違うな。

興味ない訳ない。
智くんが、嵐以外でどんな顔をしているのか?

どんな風に口説くのか?

…ベッドで、どんな甘い言葉を吐くのか?


……俺は知りたかった。
本当は、智くんにもっと近づいてみたかった。

だけど…

今の関係が壊れるのが怖くて、
踏み込むことなんかできなかった…

本当は、いつも隣にいて、優しく笑ってるこの人の…こんな姿を、見たかったんだ。

「智くん…おいで」

情事の後の気怠くて甘い空気の中、
ベッドに俯せる綺麗な背中に声を掛けると、
智くんはゆっくりと俺の方へ顔を向けた。

…ああ、こんな顔するんだ。
こういう時…

ほんの少し、俺のことを見ていたけど、
直ぐにふんわりと腕の中に入り込んできた。

……抱き締めた両腕に力を入れて
きつく抱き寄せると、智くんも俺にぴったりと身体をを寄せて来た。

「翔くん…温っかい…」
「うん…気持ちイイね…」
「…うん…」


……

………

……どうしよう…


…欲しいな…この人の事。


何年もずっと見ていて、一番側で見ていて。

まさか、こんな気持ちになるなんて…


智くんは、今、どう思ってるんだろう?

俺とのこと…


俺のこと……


/ 351ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp