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kagero【気象系BL】

第5章 霖雨



抱き締めていた手をゆっくりと解き、
柔らかい髪に手を入れ、何度も撫でた。

腕の中の彼は、じっとされるがまま、
俺に身を預けている。

「…忘れ…られた?」

「……」

俺の言葉に、ほんの僅か身体を硬くした智くん。

「…忘れたいことが…忘れたい人がいたから、俺と…」

「違う!俺…俺は……」

はっきりした強い意思を瞳の奥に湛えて、
智くんは俺をじっと見つめる。


……今はっきりと分かった。
俺、この人が欲しい…


大野智が…好きだ……


伝えて、いいのかな?

俺の気持ちを、
今気付いたばかりの俺の思いを、
この人にぶつけるとこは、
この人を困らせるだけなんじゃないのか?

見つめ合ったまま、二人の間を沈黙が流れ、
先にそれを破ったのは、智くんだった。


「俺…付き合ってる人がいて、
でも、その人が別の人と…
許せるって思ってた…単なる浮気なんか…別に気にしないって…

でも…だけど…

ダメなんだ…その浮気相手なんか、忘れさせてやるくらいの激しい気持ちに、なれなくて…」

「智くん…」

「俺は逃げた…」

それで俺に助けを…

「考えたいんだ…今までの事も、これからの事も…
そして、翔くんのことも。」

俺のこと?俺の…何を?

黙っている俺に智くんは、

「俺、やっぱり翔くんが好きだって思った。
ずっと好きだったけど…嵐になる前から、翔くんのこと、ずっと特別だったけど…」

俺だって…俺だって智くんは特別だった…
他の人とは違ってた…

「でも、その気持ちが何なのか?
しっかり考えて見つけたいんだ…

翔くんを好きな気持ちが、尊敬なのか依存なのか、
それとも憧れなのか共存なのか…」

共存… 尊敬…

その言葉に、俺は少しだけ笑った。
智くんにしちゃ、上手いこと言うな、と思って。

「翔くんに、今、恋人がいても、
俺、気持ちがはっきり分かったら、伝えたい…
それが例え、受け入れてもらえなくても、いいから。
…今はいい??…そんなんで……」


……俺よりも、智くんの方が、
ずっと潔い…

後のことをくよくよ考えないで、ちゃんと自分に向き合ってる…ならば、俺も…

「分かった…待ってるよ。俺もしっかり考えるから」


素っ裸のままでどうかと思うけど、
俺たちは、強く頷き合った。


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