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kagero【気象系BL】

第5章 霖雨


【智】


「いいんだね?もう、今更止めるって言っても、
俺、離せないけど?」

戯けたように言った翔くんに静かに頷くと、その瞳が急に真剣味を帯びた。

「…目、つぶって…」

顎を持ち上げられて。

翔くんの顔がゆっくり近付いてくる。

俺はぎりぎりまでその吸い込まれそうな漆黒の瞳を見つめて。

唇が触れそうになった瞬間、目蓋を下ろした。

さっきは擦り合わせただけの唇が、しっかりと重なる。

躊躇いがちに温かい舌が俺の唇を舐めて。

誘うように唇を薄く開くと、それは生き物みたいに咥内へと侵入してきた。

歯列をなぞられると、背筋がぞくりと震えた。

追いかけて舌同士を絡ませると、すごく熱くて…

いつしか、しがみつくように翔くんの背中に腕を回して。

夢中になって、キスをした。

「…智、くん…」

翔くんの瞳は、熱を含んで潤んでて。

まだ見ぬ宝石のように、キラキラ輝いている。


すごく、キレイ…


「…行こっか…」

吸い込まれるように目を離せないでいると、手が差し出された。

「…うん…」

その手を取ると、不意にふわりと体が浮いた。

「わぁっ…」

びっくりして、慌てて翔くんの首に腕を巻き付ける。

「お、重いでしょ!?下ろして!」
「大丈夫!鍛えてるから!」

また戯けたようにそう言って。

お姫様抱っこされた俺の頬に、触れるだけのキスを落とした。

「…本当に、いいんだね?」

これが最後と言わんばかりに、念押ししてくる。

「…うん…俺を…抱いてよ…」

しっかり頷くと。

翔くんは一度大きく深呼吸をして。



ベッドルームのドアを、開けた。



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