第1章 風花
「翔ちゃん、どうしたの?」
気が付くと、俺の顔を覗き込んでいる二人の目が。
「えっ?何で?なにが?」
「翔ちゃん、急に考え込んじゃってさ…なんか悩みでもあるんじゃないの~?良かったら話してよ…」
相葉くんが、そう言ってにっこり微笑んだ。
「お前に相談してもな~…翔ちゃんの悩みなんか、理解できないんじゃ…」
「なんだよ!!」
「なにが~?」
「やんのか~?」
「やんね~わ…」
……そう言い合いながら顔を近付けていき、
チュッ、っと軽い音を立ててキスをして、『バカだ』と笑い合っている。
……こんな風に、俺も一緒にいるだけで楽しくて、側にいるだけで幸せな…
そんな相手がいたら…
『相談に乗る』と言いながら、二人はまた戯れている。
彼女とは…
別れよう。
もう一緒には歩けない…
……
泣くのかな?
怒るかな?
…それとも、別れないって
結婚してくれるんじゃなかったの?
最低。
そう詰られるのかな?
実際にそうなんだから、何を言われても構わないけど。
……はあぁ~…
面倒くせぇ~…
スパっと、後腐れなく、スッキリ別れられないかな?
泣かれても、どうすることも出来ないし…
ましてや、
『お願いだから別れないで』と懇願されたら、俺はどうしたらいいんだろう…
想いが…
どんどん闇の中に沈んでいく…
そんな気持ちだった。
そんな俺のことはお構いなしに、目の前の二人は相変わらず仲良くイチャイチャしている。