第5章 霖雨
ほっとけないじゃん…
あんな現場で泣き出すなんて…
限界だったってことでしょ?
話を聞いてやるくらいなら、俺にも出来るよね?
この人、見かけに依らずに抱え込んじゃうとこあるから…
誰かに助けを求めるのも下手だし。
結局いっぱいいっぱいになって、あんなことになっちゃうんだよね~…
もう付き合い長いし、5人でデビユーしてからも、
俺たちは3人を引っ張っていこうって、
そう誓いあって頑張ってきた。
陰になり日向になり、『嵐のために』って。
それがいつしか、他の3人にもしっかり根付いてて、
20年近く経った今でも、その気持ちは、変わってないから…
だからさ。
やっぱり俺にとって智くんの存在って特別で。
恐らく、
驕りじゃなく、智くんにとっても同じ、でしょ?
良かった…毛蟹があって…
俺は宅急便で、『誰が食うんだよ??』
ってくらい送りつけて来た友人に、改めて感謝した。
俺たち二人がスタジオに戻っていくと、
みんながホッとしたような顔をして迎えてくれた。
「大丈夫~?大ちゃん」
「うん…ありがと」
「何か変なもん食べたんじゃない?」
「そっかも…」
相葉くんとニノも笑顔で迎えてくれた。
松潤は、少し離れたところからじっと見つめているだけで、近づいてはこなかった。
押してた収録を始めるためにバタバタしてたから、俺はその違和感に気付かなかった。
智くんも、松潤を全く見ようとしないことも。
それから、何とか滞りなく進み、予定より1時間押しで収録は終った。
俺は、私服に着替えている智くんに声を掛けた。
「用意できた?」
「あ、うん…」
「じゃ、行こっか?」
そう言って鞄を肩に担ぐ俺に、智くんは俯きながら着いてきた。
「お疲れ~」
「美味しいものご馳走してもらいなよ」
ニノと相葉くんに見送られ俺は智くんと一緒に楽屋を出た。
だから、松潤がどんな顔してそれを見送っていたのか…全く、分からなかったし、気付こうともしなかった。