• テキストサイズ

kagero【気象系BL】

第5章 霖雨


「どうしたの?元気、ないね?」

ぼんやりとスタジオの隅でセットチェンジを待ってると、翔くんが声を掛けてきた。

「あ、あぁ…そう、かな…?ちょっと、寝不足、かな…?」

適当に返事をすると、翔くんは俺の隣に腰掛けてくる。

「なに?また釣りにでも行ってたの?それとも、また絵でも描いてるの?」
「あ~、うん、まぁ…そんなとこ?」
「そんなとこって、どっちだよ」

翔くんが笑いながら突っ込み入れたけど、それにボケる余裕なんか、なかった。

「…ねぇ、本当に変だよ?なんかあったんでしょ?」

俯いた俺の視界に、無理やり顔を割り込ませてくる。

「…いや…なんもないって!」

笑顔を作ろうとしたけど…





『いやだ!絶対、別れないから!』

我慢してた筈の大粒の涙が、潤の瞳から零れ落ちた。

あの後、何度話をしても、俺たちは平行線のままで。

結局、なんの結論も出ないまま、迎えの車に乗ってスタジオまで来てしまった。

『俺、今日もここに来るから』

先に出る俺の背中に、潤がそう言って。

俺は後ろを振り返ることも出来ずに、逃げるように部屋を出た。





「ねぇ…どうしたの…」
「なに、が…?」

顔の筋肉が、うまく動かせない。

押し出した声は、みっともなく震えてて…

「なんで、泣いてんのよ…」

まるで自分が痛いかのように顔を歪めた翔くんが、戸惑いがちに俺へと手を伸ばす。


泣いてる…?

誰が…?


瞬間、頬を熱いものが流れていく感覚がして…


「っ…すみません、大野、ちょっと具合悪いみたいなんで、控室で休ませます!」

翔くんは俺の腕を無理やり引っ張って立たせると、スタジオ中に響き渡る大声で宣言して。

俺の姿を皆から隠すように背中を抱いて、スタジオから出してくれた。


/ 351ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp