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kagero【気象系BL】

第5章 霖雨


【智】

わかってる。

健くんとは一時の気の迷いで、俺を愛する気持ちが薄れたわけじゃないって。

そんなの、わかってる。

それでも…


「離せよっ…嘘つきっ!」
「智っ…愛してる、から…」


抱き締められて、あんなに温かく幸せを感じていた腕が。
知らない人の腕みたいに、冷たく思えて。

愛を吐くその唇が、見知らぬ誰かのもののように思えて。


お酒の席での、たった一度の過ち。

それもきっと、健くんから誘ったもので…

それくらい、許してやればいいじゃないか。


理性では、わかっているのに…


「…いや…触らないで…」


心が、ついていかない。


本当に

愛しているから…


心が狭いって、そんなのわかってる。

それでも、俺だけを見て欲しかった。


だってずっと怖かったんだ。

俺なんかと違って、潤はすごく人気者で。

いつも周りに人が溢れてて。

なんで俺なんかを選んでくれたんだろうって、わかんなかった。


いつか、メッキが剥がれて

なんでこんな奴と付き合ってんだろうって

そう、思うんじゃないかって…


怖くて…


だから、誰にも言いたくなかった。


なんであんな奴と付き合ってんの?

そう、思われるのが怖かった。


意気地なしの、俺。

いつだって、自分に自信なんかなくて。

そんな自分の弱い心が、こんな事態を招いてしまったのかな…?



愛してる…

誰よりも、愛してる…

だけど…



弱い俺を

許して




「潤…もう、終わりにしたい…」

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