第1章 風花
「…男同士って、どうなの?」
苦い顔でビールを飲み干し。
次に頼んだ日本酒の氷をカラカラと音を立てて転がしながら、翔ちゃんが訊ねてきた。
「…翔ちゃん…まさか…」
男に興味が出てきちゃったの!?
だから、彼女とうまくいかなくなった!?
「ははっ、まさか。関係ないよ。単なる、興味」
渇いた笑い声で否定して、また氷を転がす。
「その…いろいろ大変じゃん?偏見も多いし、将来のことだって…。そういうの、気になんないのかなって」
翔ちゃんは、伏し目がちにポツポツと言葉を落とす。
いつもは相手の目を見てハッキリ話す翔ちゃんのそんな姿に、彼の中のなにか深い苦悩の様なものが透けて見える気がした。
「うん。大変だと思う。将来のことだってわかんないし、なによりファンの子にバレたりしたら嵐はどうなっちゃうんだろって、怖いし…」
漠然とした不安が、いつも心の奥深くに小さな渦を巻いている。
でも。
それでも。
「どんなに大変でも、ニノが隣にいてくれれば絶対乗り越えられる。そう、思えるから…」
だから。
手を取ったんだ。
2人で生きていくための道を、歩きだそうって。
隣に座るニノをそっと窺うと、ふわっと優しい笑みを湛えて。
手を、握ってくれた。
「俺たちのこと話したとき…翔ちゃんや、リーダーや潤が笑顔でおめでとうって言ってくれたじゃん?リーダーなんか、涙まで浮かべてさ。良かったねって…。あの時、決めたんだ。どんなことがあっても、ニノのこと守り抜くって。みんながいてくれれば、大丈夫だって。その気持ちは、ずーっと変わんないよ?」
自分への誓いも籠めて、そう言いきると。
翔ちゃんは再び視線を落として、グラスの中身を苦い顔で飲み干した。