第8章 十六夜月
「今日は客人が来る
全員を広間に集めろ」
信長様に天守に呼ばれ告げられた言葉
"誰が"とは聞かず返事をして直ぐに三成に声をかけた
手分けをし全員に声をかけ三成には出迎えを頼み俺も広間に向かった
暫くして三成が客人を連れて広間に入ってきた
「ほぉなかなかだな政宗」
「ああ、そうだな光秀」
「はぁ面倒くさい」
「まあそう言うな家康」
思ったことを口々に話し出す
そんな中でも凛として臆することなく中央に座る
『これから安土城でお世話になります
どうぞよろしくお願いいたします』
三つ指を付いて美しい所作でお辞儀をする姿に
桜花とは大違いだなと苦笑いをこぼした
「美しい所作だな
どこぞの誰かとは大違いだな」
「む~光秀さん一言多いです!!」
俺の心の声を読んだかのように
同じ言葉で光秀に揶揄われむくれる桜花
まるで童だなと微笑ましく見つめた
『そちらの方は?』
信長様に挨拶をしろと言われ
ペコッと頭を軽く下げた桜花を見て
まだまだ姫とはほど遠いなと思った
案の定相手に"姫なのか"と問われ肩を竦めた
「ああっ!?」
「煩い桜花」
相手の顔を見て大きな声を上げる桜花を家康が叱責し慌てて謝る
『少し挙動不審ですし、挨拶がその...
あまりお上手とは言えませんので』
確かにその通りだな
もう少し礼儀作法を叩き込むか....
政宗や光秀に怒れシュンとしている桜花だったが
『ごめん桜花
ちょっと意地悪しちゃった』
「やっぱり葉月!?
なんで!何で姫なの?
って言うか嫁ぐってなんで?!
佐助君泣いちゃうよ!?」
「落ち着け桜花」
「痛っ!」
前のめりで次々に質問を投げす桜花の額を政宗が指で弾き落ち着かせた
信長様が葉月に聞くところによれば
拾われた先で姫として過ごしここへ輿入れしてきたらしい
葉月の仕草や言葉は生まれもってのものかと思っていたので
一年ぐらいで身に付くのかと感心していた
桜花が葉月に話しているのを聞き
勝手に抜け出していたのかと桜花を問い詰め
「少しは大人しくてろ!?」
そう怒ると謝り政宗の後ろに隠れてしまった