第6章 待宵月
馬を走らせたどり着いた春日山城下町
表通りを通ることはせず裏道を行く
「お待ちしてました家康さん」
城を見上げどこから入るか思案していると
木の上から佐助がスタッと降りてきた
「葉月は?」
「信玄様が口説いてます」
「.....案内して」
佐助は忍び道を通り導く
家康は殺気を瞳に滲ませ城の中へと入って行った
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「そろそろ俺だけの姫にならないかい?」
『...しつこい男は嫌いです』
謙信に与え得られた部屋で寛いでいると
信玄がやってきて口説き始めた
無視をされても全然気にする素振りも見せず
にこにこと微笑みを浮かべ甘い言葉を囁く信玄
『そんなことよりも信玄様
レースはいつになったらいただけるのですか?』
佐助から聞いていた条件を思いだし信玄に視線を向けた
「葉月が俺の姫になってくれたらかな」
『交換条件は私と会うことだと
佐助から聞いたのですが』
「ああ、そうだよ
口説くにはまず会うことから始めないとな」
『来るんじゃ無かった....』
いい加減うんざりしてきた葉月は小さなため息を吐いた
「憂いを帯びた顔も美しいねぇ」
そんな葉月を見て距離を詰め
片手を持ち上げチュッと口付けた
「徳川をやめて俺の所に嫁いでこないかい?」
『お....』
「行くわけないでしょ」
お断りと言おうとした葉月の言葉を遮り
ぴしゃりと言い放ったのは険しい顔をした家康
その後ろには佐助もいた
手を握っているのを見て無言で部屋に入り信玄から引き離した
「残念。どうやら時間のようだ
これは渡しておくよ
また会おう美しい姫君」
布に包まれたレースを置いて信玄は部屋を出て行った
「葉月....帰るよ」
「姉さん家康さん気を付けて」
『うん。謙信様達によろしく
またね佐助』
レースと持ってきていた小さな荷物を持ち家康と安土へと帰っていった