第6章 待宵月
『信玄様はお口がお上手ですね』
掬い上げた髪に口づけをしながら
妖艶に微笑んでいる信玄に微笑みかえした
『今まで数えきれない程の女性に
その様な甘い言葉を囁いてきたのでしょうけど
私をその様な女たちと一緒にしないでいただけますか?』
「さすがは姫だな~
一筋縄ではいかないな」
髪の毛を手放し肩を竦めた
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「いい加減にしてください!!
つーかお前ら何俺一人に押し付けたんだよ!!?」
朝からぶっ続けで謙信のお相手をしていた幸村は
端に腰を下ろして眺めている大翔と佐助を見ながら叫んだ
「え~幸村のほうが俺より強いだろ?」
「頑張れ。幸村なら大丈夫」
最初は張り切っていた大翔は早々に音をあげ戦線離脱し
後から追いかけてきた佐助は最初から応援に回っていた
「よそ見とはずいぶん余裕だな幸村」
「うわぁー!!」
「つまらん。また明日相手をしてやる
それまでにもう少し鍛えておけ」
そう言い疲れを一切見せず来た時と同じ歩調で出て行った
「あちゃ~よそ見するからだぞ幸村」
「ドンマイ幸村」
ヘラヘラ笑って肩をたたく大翔と無表情でグッと親指を立てる佐助
「お~ま~え~ら~!!?」
ボロボロになった幸村がゆらりと立ち上がった
「あっ佐助ヤバいぞ」
「その様ですね大翔さん」
クルッと幸村に背を向け廊下を走り出した
「待ちやがれっ!!
いつもいつも面倒ごとを俺に押し付けやがって
今日という今日は許さねえ!?」
鬼の形相で逃げる大翔と佐助を城中を追いかけまわした