第6章 待宵月
信玄の部屋を探して歩き出したが
何処かわからずうろうろさ迷っていると
前方に人影を見つけた
『おはようございます』
「はい。おはよぅ......どちら様でしょうか?」
後ろから声をかけると振り向き挨拶を交わそうとしたが
葉月を見て怪訝な顔をした
『申し訳ありません。佐助の姉の葉月と申します』
「佐助の姉君でしたか!
私は上杉家の家老・直江兼続と申します」
『直江様少しお聞きしたいことがあるのですがよろしいですか?』
「はい!私でわかることなら何なりと!?」
『信玄様の部屋を探しているのですが...』
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「佐助は遠い地に住んでいたと言ってましたが」
『はい。簡単に帰れるような場所ではありません』
兼続に信玄の部屋まで案内を頼み
部屋につくまでの間当たり障りのない会話をしていた
「その様な遠いところから信玄様を尋ねに来られたのですか?」
『いえ、最近は安土に住んでおります』
「安土...ですか」
「姫、春日山城に住んではどうだい?」
『ふふっ考えておきます』
突然会話に入ってきた信玄に笑顔で答えた
「おはようございます信玄様」
「おはよう兼続
待っていたよ姫、さあ部屋へお入り」
『失礼致します』
手をさしのべ部屋の中へとエスコートしてくれた
「では、私はこれで失礼致します」
兼続が去っていき信玄と葉月は向かい合って座った
「会いたかったよ俺の天女」
『あら、信玄様
天女は桜花だったと思うのですが』
「おや、そうだったかな?」
クスクス笑いあっていると
不意に信玄の手が伸びてきて髪を一房掬い上げた
「葉月俺は君が欲しい
君は美しくとても聡明だ
徳川はやめて俺の元へおいで」