第5章 十三夜月

恋人に会ったかのようにギュウッと抱きしめる利家を無言で引き離す家康


「葉月!知り合いなの!!」


桜花が驚いたように声をかけてきた


『以前にあったことがあるだけよ』


「俺が嫁に貰ってやるって言っただろ」


『あら、そうだったかしら?
全く覚えてません』


「覚えてねぇ訳ねぇだろ
お前の屋敷に毎日通ったんだぞ?」


『しつこい男性と私より弱い男性は嫌いです』


「思った展開じゃねぇな」


「だが、これはこれで面白くなりそうだ」


政宗と光秀はにやりと嗤いながら見ていた


「まあなんだ、利家落ち着け」


「なにほっとしてるんですか秀吉さん」


利家が桜花ではなく葉月に行ったことで
あからさまにほっとする秀吉をジロッと睨み付けた


「葉月貴様なぜ利家を知っている」


『...お義父様の屋敷によくいらしていたんです
でも私が知っているのは利家ではなく"犬千代"です』


「腕試しするのに流石に"前田利家"じゃあ都合悪いだろ?
だから幼名の"犬千代"って名乗ってたんだよ」


『幼名.....そこまで覚えてなかったわ
こんなことなら浅井長政にしなさいって言えばよかったわ』


小さなため息を吐き呟く


「利家」


「なんでしょうか信長様」


「貴様葉月を嫁に欲しいのか?」


「は?なに言ってるんですか」


なにを言い出すんだと冷たい目を向けるが信長は気にもしない


「そうじゃなきゃ毎日口説きに行きませんよ信長様」


「利家、貴様に好機を与えてやろう」


「おっ光秀面白くなってきたぞ」


「そのようだな政宗」


「面白くないし煩い」


ニヤリと嗤う信長と愉しそうに談笑する二人に
イライラと眉間の皺を深めながら利家を睨み付ける


「葉月貴様先程"自分より弱い男は嫌い"だと言ったな?」


『はい。言いましたがそれがなにか?』


「利家」


「は⁉️」


「葉月と勝負をして勝てたなら
嫁にすることを許してやろう」