第5章 十三夜月
桜花と秀吉が無事に恋仲になったと聞いて
一安心し穏やかに家康と過ごしていた葉月
だがその穏やかな日々に波乱は突然やって来た
家康の御殿に信長から城に来るようにと使いがやって来たのだ
「失礼します」
家康と一緒に広間に入ると
愉しそうに口角を上げた信長
正反対に不機嫌顔の秀吉
その間に挟まれおろおろする桜花の姿があった
『今日はどの様なお話ですか信長様』
所定の位置に座って直ぐに信長に話をふった
「先日話した桜花の縁談の話だ」
『桜花は秀吉さんと恋仲になったはずですが』
「確かに聞いた
が、少し遅かったな」
「遅いとは?」
「向こうに文を送った後だからな
もうすぐ着くころだろう」
「信長様!そのような大事なことを
なぜ黙っていたのですか!?」
「お前がハッキリしないから悪い」
「ははっ、確かにお前が悪い秀吉」
『あら、そんなこと言ってはダメですよ
こんな優柔不断な人でも桜花が好きになった人なのですから』
「う゛っ悪かった...」
「ホントはっきりしてください」
がっくり項垂れる秀吉に追い打ちをかける家康
「信長様」
そこに出迎えに出ていた三成が帰ってきた
「三成か入れ」
「はい。失礼いたします」
三成に連れられて入ってきたのは
こげ茶色の髪に緑の瞳の男
『え...?』
「なに?」
『あ、ごめんなんでもない』
「お久しぶりです信長様」
「息災か利家」
「はい!ここ最近は各地を回って腕試しをしてました」
楽しそうにしゃべる利家の横顔をじっと見つめる
その視線を感じたのか不意に利家がこちらを向いた
「あーー!!」
ビシッとこちらを指さし叫んで立ち上がり近づいてきた
「は?なんなの」
不愉快そうな顔で聞くが利家は家康を通り越して葉月に抱き着いた
「葉月会いたかった!?」