第1章 新月
無言で前を歩く家康その後ろを葉月も無言でついて行く
現代と違い舗装されていない道
歩くたびにシャリシャリと砂の音だけが聞こえる
『(同じような風景ばかり、迷わないようにしないと)』
両サイド同じような垣根で御殿をぐるっと囲っている
何個目かの角を家康が曲がり葉月も角に差し掛かった時
『!?』
体を後ろに引かれ口を抑えられて誰かの腕の中に納まった
「ちょっと我慢して」
ふわっと体を抱き上げ家康と反対方向へと走りだした
「葉月?」
聞こえていた足音が無くなり家康は後ろを振り返るが
そこには葉月の姿は無くつけていた簪が道に落ちていた
「(道に迷ったわけないな、すぐ後ろに居たし。じゃあ攫われたか?
そうなら腕がたつヤツだ気配が感じられ無かった)」
落ちている簪を拾い上げ
もう一度安土城へ足を向け歩き出した
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「ただいま」
数分走ってある一軒の家に入った
そこには3人の男性がいた
「佐助何処にいって......
はああ!!ちょっと待て佐助!?
なにでそいつがここにいんだよ!!」
わなわな震えながら指をさして怒り出した
「まあまあ幸、落ち着け
やあ美しい天女、俺は武田信玄だよろしく」
葉月の手の甲にチュッとキスを落とした
『あら、私は葉月と申します。
信玄様よろしくお願いいたします』
「お前も何普通に挨拶してんだよ!」
信玄の手を借りて佐助の腕の中から降りた
『あら、怒りっぽい方ですね
貴方のお名前は教えていただけないのですか?』
「おこっ!俺は真田幸村だ!」
『ふふっ幸村様ですね
それでそちらのお方は?』
「おれの上司、上杉謙信様です」
『佐助の上司?あらそれは大変
私は佐助の姉の葉月と申します
弟がお世話になっております。』
「俺は世話などしておらん」
「そうだぞ天女
謙信は刀を手に追いかけまわしているだけだ」
『あらそれは大変ね
でもその成果は出てるみたいね
さっき佐助の気配に気が付かなかったもの』
よしよしと頭を撫でると無表情の佐助の頬が微かに緩んだ