第4章 弓張月
信長たちが戦いだして数刻の時がたった
両者一歩も引かず戦い続ける
そろそろ頃合いかと政宗は劣勢を装い
兵に後退をするように目配せた
それを見て佐助は幸村の元へ伝令を走らせた
「幸村様、信玄様
そろそろお時間でございます」
「おや、もうそんな時間かい?」
「それじゃあ仕上げにかかるとしますか」
「楽しい時間だったぞ石田三成!
さあ天女を返して欲しくば力ずくで来い!!」
「そのようですね。いざ尋常に勝負!」
激しい鍔迫り合いに桜花は声無き悲鳴を上げる
先ほどの穏やかなほほ笑みでの話とはかけ離れた戦いに
体に力が入り瞳をギュッと閉じた
「信玄様そいつ邪魔じゃないですか?」
「天女が抱き着いてくれるのは嬉しいが
確かに戦いの邪魔ではあるな~
誰か天女を見張ってくれる者が居れば良いのだがな~」
「!?信玄様、どうか私にお任せください!?」
「そうか~悪いな~」
間延びした喋り方をしながら桜花を男に託し男の後姿を見送った
チラッと幸村を見ると微かに頷き静かに後を付けていった
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「葉月!?」
『あら、桜花も捕まったの?』
「あ~そうみたい」
手を縛られた桜花は
あははと乾いた笑みを浮かべた
「さあ、姫君達出番だ」
後ろから現れた顕如に連れられて戦場へと向かった
無言で歩く桜花だったが顕如の横を歩く男を見て
チラッと葉月に視線を送った
「ねえ、あれってもしかして...」
『大翔よ』
こそこそと囁きあっていると
大翔が歩くスピードを落とし横に並んだ
「怪我したくなかったら大人しくしてろ」
「うわぁ~悪役が言いそうなセリフだね」
「今は悪役だからな」
回りに聞こえない音量で囁きあっていると
顕如が後ろを振り向いた
「どうかしたのか?」
聞くと顕如がくいっと顎で示した
その先に信長と謙信が戦っている
「信長よ、その首いただくぞ!?」
顕如はそこへ軍勢で横から奇襲を仕掛けた
が、不適に笑う信長と謙信
二人の合図で軍勢に弓矢が放たれた
罠に掛かったのは顕如の方だった