第4章 弓張月
「何故ですか信長様!?」
「秀吉落ち着け!」
「桜花が居なくなったんだ
落ち着いていられるか!?」
「日が沈んだ今
暗闇の中を捜すのは時間の無駄だ」
「し、しかし....」
「失礼します
聞きたいことが....何かあったんですか?」
兵の手当てを終えた家康がテントに入っていくと
険しい顔の秀吉が目に入った
「桜花のやつが何処か行っちまってな」
「は?」
政宗が簡単に説明すると家康は大きなため息をはいた
「信長様の言う通り今は動かない方が良いです
明かりをもって移動するなんて自殺行為です」
「そ、それはわかってはいるが...」
「あやつは幸運を呼ぶ女だ
そうそう死んだりはせん
家康葉月はどうした?」
「は?こっちに来てるんじゃないんですか?」
「いや、来てねえぞ」
「「.......」」
「その事について少々お話があります」
シーンと静まり返ったテントの中に
見知らぬ声が響いた
「誰だ!?」
音もなくシュッと現れた男に
信長以外が一斉に刀を構え声の主を睨み付けた
「待て
貴様一人で敵陣に来るとはなかなかの度胸
して、誰の使いだ」
「お褒めいただきありがとうございます
俺は上杉家に使える忍び軒猿頭領の佐助と言います」
「上杉の忍びだと!」
「ほお、その上杉の忍びがなんの用だ」
「用件は三つです
まず一つめ、桜花さんは保護しました」
「桜花は無事なのか!」
「はい。元気です
秀吉公に怒られると心配してました
二つめ、この戦には第三者が関与しています」
「それなら分かっている
顕如と言う僧だ」
「では三つめ、これが一番重要な事です
姉が......攫われました」
「は?姉?別にアンタの姉が攫われたって
俺たちには関係ない...」
「姉の名は葉月」
「え...?」
「家康公、貴方の許嫁は俺の姉です」